注意書き:本記事を読む前に目を通して下さい
このページはあくまでmasaの勉強用の記録です。実臨床に用いる場合は自己責任でお願いします。また、記事作成時の情報ですのでご自身で最新の情報を確認お願いします。
概論
TGAとは、前向性健忘のこと。基本的にはイベントから先の事が覚えられない。ただ、見当識障害を起こして繰り返し同じを質問することが多い。
エピソードが続く間、一般情報or個人情報を思い出せないこともあるため、逆行性健忘の様に見えることも。
*遡って覚えられないのは逆行性健忘!
定義
24時間以内に解決し、エピソード中に起きたこと以外は記憶が回復。
発症率
年間10万人あたり5.2-10人程度。50歳未満では稀、50歳以上にすると10万人あたり23.5-32人。平均発症は60-65歳。
脳血管のriskfactorでTGAリスクがあがるかというと、そうではない(HT/DM/DLで有意差なし)。ただ、TGA患者は高血圧の可能性が2倍、DLが3倍。同年台のTIAと比べてDL、過去のACS、CIの率が高いとされている(DM、HT、AFは低い)(Eur Neurol. 2014;71(1-2):19-24. Epub 2013 Nov 23. )
偏頭痛はTGA患者で6倍多い!再発のあるTGA患者ではさらに3倍近い(14%VS 37.5%:J Neuropsychiatry Clin Neurosci. 2019;31(1):43. Epub 2018 Oct 11. )
症状
神経学的関与は中基底側頭葉〜海馬。病因についてははっきりしていないが、仮説としては血管の病因・偏頭痛現象・てんかん・心因性障害などがある。
患者の10-40%は頭痛を訴え、他には嘔気・めまい、不安・知覚障害を訴える患者もいる。短期記憶障害が問題になることが多い。
症状は平均で6時間程度持続(1-10時間という報告も)・・・24時間以内に消失することが多い(12時間以内に全て解消された、という報告も)
きっかけになるイベントがある人もいればない人も
・急性or慢性の感情的イベント ・身体活動 ・バルサルバ法 ・激しい痛み ・姿勢の変化 ・医療処置・体温の変化 など。
*半分以上が症状なしに発生した後の朝に発症。
検査
・海馬にDWIで点状病変が複数でることも。超急性期には所見がなく、12時間後が一般的。発生率のピークは12-72時間で出現。7-10日間は持続し、1-6ヶ月後のフォローで消失する。
Check Point
・眼球運動障害:Wernicke・脳幹障害
→ WEを疑ったらチアミン投与してしまってOK
・視野:側頭葉の脳卒中
・個人的アイデンティティの喪失:解離性健忘
・歩行:脳卒中で障害
・高度認知機能障害(靴紐をむすぶ、など)
診断:基本は臨床診断
信頼できる観察者が目撃した記憶障害の突然発症(目撃者がいるのが重要!)
・顕著な前向性健忘・・・通常は繰り返し同じ質問を
*いくつかの逆行性健忘と実行タスクの軽度の困難が存在する可能性あり。先行する頭部外傷や意識の変化はなく、個人のアイデンティティを失うこともない。
・エピソード中or後に限局性の神経学的症状or徴候はない
・臨床症状は少なくとも1時間以上続き、24時間以内に解消(24時間以上続く場合はTGAから除外:せん妄や急性毒性代謝性脳症など鑑別へ)
D/D:鑑別疾患
TIA or脳卒中
まれな症状で孤立性健忘症を起こすことはある・・・TIAまたは脳卒中のまれな症状で0.2-1.2%と報告(Stroke. 2017;48(8):2270. Epub 2017 Jun 5. )
→ 側頭葉、視床、尾状核、帯状回、脳梁の病変で症例報告あり。
*ただ側頭葉を含む脳卒中では視野異常が一般的(以外とTGA様症状を起こす脳梗塞は見逃されている・・・)
☆リスク評価でMRIも考慮必要!
てんかん性健忘(稀)
→ 嗅覚・幻覚or運動自動化が含まれる。逆行性健忘の方が顕著になる傾向あり。*繰り返すことが多いので、脳波測定に回る患者が多い。
治療
基本的には不要。
2.9-26.3%の範囲で再発するという報告あり。その中でも年率は2.5-5.8%。
ただ、Wernicke Korsakoff症候群も健忘を起こしうるので、疑わしければ初期にチアミン投与も考慮。
繰り返している患者の場合はTEA:一過性てんかん性健忘の可能性があるため、脳波が取られていなければ脳波測定。その場合は抗痙攣薬で88.5%が治る。
<masaの経験症例>
○夕食後に仮眠を取って、起きたら様子がおかしかった60代女性
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