【まとめスライドあり】救急・集中治療領域における緩和ケア【当直に入る医師必見】

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勤務医夫の勉強記録
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このページはあくまでmasaの勉強用の記録です。実臨床に用いる場合は自己責任でお願いします。記事作成中の情報ですのでご自身で最新の情報を確認した上でお願いします。

 

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まとめスライド

本日の言いたいことをまとめたスライド1枚がこちら

ERで緩和ケアのニーズが高い患者のスクリーニング

<Step1:1次スクリーニング>

  • 進行した認知症・中枢神経疾患:歩行やトイレで介護の手間が大きい、会話困難
  • 進行した悪性腫瘍:転移がある、もしくは局所的な進行がある
  • 末期腎不全:透析中、もしくはCre 6mg/dl以上
  • 進行したCOPD:hot導入or安静時呼吸困難あり
  • 進行した心不全:慢性的な呼吸苦・胸痛、安静時や軽労作で倦怠感
  • 末期肝疾患:難治性腹水、肝性脳症、吐血
  • 敗血症性ショック:基礎疾患がありICU入室必要
  • 死が切迫している状況、医師が緩和ケアが必要と判断:80歳以上の高齢者/多発肋骨骨折/頭蓋内出血の高齢者、AIDS末期

1つでも当てはまれば次へ!

<Step2:二次スクリーニング>

  • surprise question陽性「この患者が1年以内に死亡したら驚くか?」と自問自答して驚かない
  • 頻回の救急外来受診:6ヶ月間に2回以上の受診
  • コントロール出来ない以下の症状がある:痛み/呼吸困難/うつ/倦怠感
  • ADLの低下がある:頻回な転倒/食事摂取量の低下/活動性の低下/褥瘡
  • 治療・ケアのゴールが不明瞭/介護者のストレスが著明

2つ以上のチェックがある場合は緩和ケアニーズがあると判断し、Step3へ。

<Step3:トリアージ:緩和ケア介入の緊急度を判断>

○緊急度低・・・外来で基本的な緩和ケアを提供し、パンフレットなどを渡す/外来で緩和ケア専門科に紹介
○緊急度中・・・基本的な緩和ケアを提供し、救急受診から72時間以内に再評価を行う。必要に応じて緩和ケア専門科に相談
○緊急度高・・・救急外来で基本的な緩和ケアアセスメントを行い、緩和ケア専門家にすぐに相談。

ICUでのスクリーニング項目は以下

  • 慢性重症疾患により明確な定義はないが、ICUに5-14日滞在
  • 生命予後が規定されている疾患にかかっている患者の侵襲的処置(気管切開、胃瘻、透析など)
  • 80歳以上
  • 重大な併存疾患・もともとのADLが低い
  • 進行性の慢性疾患:転移癌、心不全、慢性呼吸不全、慢性腎不全、ALSなど
  • 改善が困難な急性疾患
  • 主治医により予後不良の判断をされた
  • 患者や家族の満たされていない緩和ケアニーズ

迅速な緩和ケア評価:ABCDアプローチ (順番はB→D→C→A)

*Palliative Aspects of Emergency Care.p.19,Oxyford University Press,2013.

A:ACP Advanced Care Planning

 → 患者本人の気がかりや意向/価値観や目標/病状や予後の理解/治療や療養に関する意向や選考を確認する。

B:Better symptom 症状緩和、特に鎮痛

 → 鎮痛は積極的に。鎮痛を行っても画像検査が発達した今では診断には寄与しない。(Cochrane Database Syst Rev,(1):CD005660,2011)

C:Caregiver 介護者、同伴者

→ 主介護者、同伴者への声かけを確認する。

医療従事者は「自分達は患者本人のことに対して素人である」患者の専門家は介護者・同伴者
→ 医療という分野の特殊性から、どうしても医療者主体の方針決めになってしまうため、意識して「患者の専門家」と話あって方針を決めるべき。

D:Decision making capacity 意志決定能力 理解・認識・論理的思考・表明が出来るか?

〜救急のフロントで知っておくべき情報〜

○予後が不確実な場合はtime-limited trialで短期間治療してみるのはあり(反応があれば継続:Inensive Care Medicine,44(9):1369-77,2018)
 →一度始めた治療でも辞められるため!
心停止の予後が悪いのは知っておく・・・通常の蘇生で介助なく日常生活が出来るのは3%、社会復帰は0.6%(Resuscitation,85(6):762-8,2014)
○65歳以上の高齢患者の緊急気管挿管後の予後 → 家に帰るのは24%、院内死亡が33%。90歳以上では50%が院内死亡、36%が転院後死亡、生存するのが14%(J Am Geriatr Soc,66(7):1377-81,2018)
○ICU入室患者のICUでの死亡率は3.8%、病院死亡率は8.2%(日本ICU患者データベース)。米国は10-29%の死亡率(癌患者の入室も多い為:Society of Critical Care Medicine:Critical Care Statistics)
○家族にICするとき → Best Case/Worst Case/Most Likely caseに分けて説明を行う。
 その上でHope for the best,Prepare for the worst(最善を来た医師、最悪に備える)の考えを医療者・家族で共有する。
 *家族のケアも大事:ICU患者の家族の精神疾患の有病率はうつ病4-94%、不安障害2-80%、PTSD3-62%とされる(A Systematic review.Ann Am Thorac Soc,16(7):894-909,2019.)

「出来る事全てをやってください」の意味

 → 1分、1秒でも生命期間を延ばすことだけではなく、患者や家族が希望するゴールに沿って、精神的ケア・疼痛管理・家族ケア・臓器提供オプションの提示、PICS予防など全てを行う事
 ★ただ「すべて」が向かう先のゴールを決めることがとても重要!
○家族は「救命して欲しい」から救急車を呼ぶわけではなく、「苦しいからたすけてほしい」「どうしたらよいかわからない」という理由で救急車を呼ぶ。
★この時ぶれてはいけないのは下記
患者の価値観に沿った患者中心の意志決定、目の前の患者にとっての最善の治療・ケアを行う事(ここは絶対にぶれてはいけない)
②①をすることで個人が法的に攻められないこと!

医療倫理の4原則

  • 自律性尊重:Respect for Autonomy:患者の自律的意志決定を尊重しなければならない
  • 無危害:Non-maleficience:患者に危害を及ぼしてはならない
  • 善行:Beneficience:患者の利益のために積極的に行動せねばならない
  • (配分的)正義:Justice:人々は平等に医療を受ける権利がある。

無益さ

  1. 生物学的無益さ・・・治療が困難に近い/目標を達成できる可能性が極めて低い
  2. 死が切迫しているという無益さ・・・一時的には改善されるかもしれないが、全身状態を見るとすでに死が避けられない状態である
  3. 最終的に無益になる状況・・・介入すれば一時的に改善するが、植物人間のようになってしまう
  4. 生活の質の面での無益さ・・・治療を行っても本人が望んでいた身体機能までは改善せず、「生きていてもしょうがない」と感じるような状況になってしまう場合。

【参照テキスト】

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