〜良い在宅医の探し方〜「痛くない死に方」「痛い在宅医」を読んで内科医が思う事

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医者看護師夫婦が教える終末期医療
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こんばんわ。

 

 今日は久しぶりに、内科勤務医の読書日記を。

とはいってもいつもの様に自己啓発本ではなく、医療関連の本になります。

タイトルはその名も「痛くない死に方」「痛い在宅医」

 

文字通り「自宅で最期を迎えたい」「病院で過ごすよりも家に居たい」という患者の思いの寄りそうのが仕事の在宅医のお話です。実際に、これまでたくさんの数の患者さんを家で看取っている長尾先生が患者さんの生活に触れる中で感じた事、在宅で過ごしたいと思っている方が取るべき行動について語っているお話です。

 

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訪問診療をしている身として読んでいて学ぶ事、なるほどと思うところもありましたが、おや?と思うところもあったのが正直なところです。

 

 ただ、どちらの本も「在宅医療」について全く知らず、病院の医療>在宅医療のイメージが付いている方には一度読んで頂くと、在宅医療の誤解が晴れる本になっています。

 

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おすすめです!

そこで今回は二つの本をmasaが読んだ率直な感想と、この本が招きかねない誤解、そしてmasaが思う良い在宅医の選び方についてまとめました。

 

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終活の1つに活かしてもらえれば。

 

では始めに、本日のまとめです。
「今日話す事」
・「痛くない死に方」「痛い在宅医」を読んだ感想
・良い在宅医の条件 by masa

「見て欲しい人」
・病院>在宅と考えている人
・在宅医療に興味がある人

「結論」
・一度家族で自分の最期の瞬間への希望についてお話を
・差し迫っているのなら、「良い」在宅医を捜して下さい。
・家を選ぶなら、それなりの覚悟を決めて
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masaの読書日記 2021/03

今回masaが読んだ本は次の2冊。

○痛くない死に方

 

○痛い在宅医
どちらも在宅医療を実践されている長尾和宏先生の書かれている本です。長尾さんはこの2冊以外にもたくさんの本を執筆されています。今回masaがこの二冊を読むことになったきっかけは、2冊目の「痛い在宅医」をベースに作られた映画が、今まさに映画が上映されているためです。

 

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実際にmasaは訪問診療も行っているため、身近に感じるテーマでもあり手にとりました

<痛くない死に方>

こちらを先に読んだ方が読みやすいと思います。

 

簡単に内容を伝えると、欧米と比べて日本の終末期、つまり向こうの世界に旅立たれるその瞬間に行われている医療がいかに違うか

そして医療が発達してだれでも気軽に病院に受診できてしまうからこそ生まれる誤解。点滴くらいはしてあげないとかわいそうじゃないか。その考えが以下に家族を苦しめることになるか、という内容が書かれています。

この事に関しては本当に誤解されている部分が多いです。実際に病院で当直をしていても(もちろん一期一会でその時だけの救急担当医が希望を聞くことの難しさはとても大きいですが)、

 

点滴もしないなんて見殺しにすることに成ってしまう

という思いを抱えておられる家族さんの多い事多い事。

この本いはその誤解を取るために必要なことが書かれています。

 

・最期の10日に過剰な点滴など延命治療を行った人は、痰や咳で苦しみ、ベッド上で溺死する。
・救急車を呼ぶということは、延命治療を希望するということ
などなど。

 

そしてその結果、平穏死を望む人の8割が平穏死に至ることが出来ないというショッキングな現実が書かれています。

 

そのためにあなたが家族が出来る事についても記載されているので、

 

自分の両親や祖父母が高齢になり、最期の時が刻一刻と近づいているのは分かっている。でも見ないようにしている。

そんな方は一度読んでみてください。とても読みやすいですよ。

 

なぜこんなに勧めているか、というと。人間不思議なもので、見たくないものを遠回しにしていると、いずれ何倍にもなって帰ってきます

 

「延命だけはやめてね」って行っていた両親・祖父母が口から管を入れ、機械につながれ、意思疎通も取れず植物状態になり病院を点々とする。

 

そんな姿を今想像してみて、

 

そんな未来は嫌だ!

 

と思った方。

今すぐ「在宅医を探せ!」とはいいません。

 

家族内での話合いの時間を取ってください!
どんなことをして欲しいか、最期の瞬間はどんな形がいいか、どこで過ごすのがいいか。

 

具体的でなくても構いません。そこは僕ら医療者の出番です。
そうではなく、患者・家族の中で、ざっくりとしていてもいい共通の認識を持って下さい

 

それを僕らに伝えてくれれば、医療者が形にします。違うなっと思われたら修正します。

 

その共通の認識を提案する工程が抜けてしまうと、

 

「こんなこと望んでなかった」「こんなはずじゃなかった」

 

という現実があなたに襲いかかってきます。
もう一度言います。

 

どうぞ、元気な時に。人間だれもにやってくる最期の時の過ごし方を話合ってください。

 

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そのためのツール*もしばなカード*

 

とはいっても、なかなか改まって話をするのは難しいですよね。そんな時にはこんなものも便利です。

カードゲームの要領で、自分が人生の中で大事にしておきたいことを、カードに書かれているさまざまなことから選りすぐる

その過程で

「自分の人生で大事にしたいことなんて思いつかないよ!」

 

と思っているひとも、

「あぁ、なるほど。自分はこんなことを大事にしているのか」

 

と思いつくと思います。

 

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僕もなんどかやったことがありますが、面白いですよ!

 

そして、その勢いのまま読んだ本が次の本です。

<痛い在宅医>

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先ほどの「痛くない死に方」が理想を書いた本だとすれば、こちらは日本の在宅医療の現状を書いた本になります。そして、理想がかならず実践される(苦労なく)と思った家族さんが、現実に直面し、打ちのめされる実体験が記載されています。

 

この言葉だけで伝わるのではないでしょうか。

「最期は家で見る」と決めた私がバカでした。

娘様の言葉です。

さっきの本でもそうですが、在宅医療は医療者・ヘルパーはもちろん、家族様の力が不可欠です。もちろん家族なしの一人暮らしで家で看取りを行う例も稀に存在します。しかしそれでも、家族様の力が不可欠です。

 

 

なにより短期ではなく長期戦です。がんなどの場合は余命がわかっているところもありますが、そうでは無い場合、本当に先が見えない介護が家族を襲ってきます常に医療者が家に居るわけじゃ無いんです。相当にしんどい負担が家族を襲います

 

そこを理解せずに、

「家で最期を迎えたいっていうから家にします!」

では本当に大変です。

 

この本で語られている「3者の覚悟」。それは本当にその通り。

 

今一度、
「本当に家で見ますか?」
と自分に問いかけて下さい。医療者が決めたから、親が望んでいるから。
そうではなく、家族の貴方が、本当に心から家でみようと思っていますか?と。
ここまでは筆者と本当に思うことが一緒でしたが一つだけ違うと思った所。
少し(過剰といっていいくらいに)病院の医療はずさんで、在宅医療が素晴らしい!と書かれている部分があります。

 

実際、病院の先生にも素晴らしい先生はたくさんいます。もちろん、「この先生大丈夫かな?」って人もいますが。

下の文がmasaが読んでいてメモに感想を書いた時に、思わず読み進めるのを止めて書いた文章です。

 

「在宅医療は大事だけど、病院の医療よりないがしろにされているのは事実だけど。
それでも「病院の医療はクソで、在宅医療がベスト」って言い切るべきじゃない。
どうしても在宅医療>>病院医療の色が強くて、そっちの意味で本を読み進めるのがしんどかった。」

 

もちろんあなたが住んでいる場所によると思います。
この本で紹介されている先生は良くない先生なのは確かです。

 

それでも、病院でなければ安らかに最期を迎えられない人が居るのも事実です。

 

テープ製剤や経口薬、座薬だけではコントロールが付かず、皮下注射の点滴でもうわごとの訴えが強く、看護師がしんどくなった時にすぐに判断して医師が指示する薬を使うことで、そこまでしないと安らかに旅立たれないケースも実際にいます。

日本の終末期医療は外国に遅れているのはその通りだし、病院にも在宅にも「大丈夫かな?」と思う先生がいるのも事実です。

 

でも、1人だめな先生が病院にいるから、病院にいる先生はみんなダメ、ってわけじゃもちろんありません。だって、それなら在宅医療もやっぱりダメってことになるでしょう?

 

出版のために仕方ないことなのかもしれませんが、在宅医療>>病院の医療、という側面がプッシュされすぎているように見えてしまって、読んでいて少し悲しくなりました。
ではこの二冊の内容を読んで。それを踏まえた上で、在宅医を選ぶ時に出来る事について、本の内容も重なりますが記載していきます。


【実際に在宅医masaが在宅医を選ぶ時に注意すること】

もちろんこれから紹介する事が全てそろったから、いい在宅医、とも限りません。

 

これに関してはサービス業である以上、(誤解を恐れずに言えば)「当たり外れが必ずあります」

 

それでも、あなた(介護する家族)に覚悟があって、さらにこれらが整っている場合はおうちで最期を迎えられる可能性は高くなると思います。

看取り件数/対応地域

 これは本でも書かれていましたね。看取りの件数をどれくらいしているか、調べて見ましょう。ホームページに書かれていたらそれでOK。書かれていない場合は調整をしてくれているCM(ケアマネージャー)や相談員さんに聞いてみましょう

 

やはり数が物を言う部分は多分にある世界です。その先生・病院がどれくらい経験豊富なのかは調べて見ましょう

 また、対応している地域に自分の家が入っているかも重要です。あまりにも遠い場合は、往診に来てくれる距離があるためハードルが上がります。

 

これは、「だから行きません」というわけではなくて、「だから貴方のところに行くまでに時間がかかってしまう」ということです。

 

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もちろん電話で連絡も出来ますが、近くのお医者さんが来てくれるのに越したことはないと思いませんか?

 

 

医師の年数/資格/経歴

 これも経験に重なるところがありますね。何年目のお医者さんかは気にしましょう。

ただここで注意が必要なのが、年が上であればあるほど良い訳ではない、ってことです。なぜならだれしも医者年次=年齢です。上がってくればくるほどに体力が無くなってきます。医者も人間である以上、体力による判断や考え方が変わります。どんなにいい先生でも(めんどうだから)という思いが顔を出します。

願わくば、駆け出しではない中堅で、なおかつ高齢ではない先生がいるクリニック・病院だといいですね。

余裕があればその先生の資格や経歴も調べましょう。在宅や家庭医療専門医、緩和ケア専門医など複数の資格がありますが、資格=大丈夫ではもちろんないのですが、ないよりはあるほうがいいのは事実ですから。

365日24時間対応を対応する医者の数(24時間対応は1人だと厳しい)

 これも本ででてきました、365日、24時間対応。言葉の響きは良いですね。

 

 

 こう名前が出ていても、「24時間(電話では)対応します」ということもあり得ます。実際に訪問に行く事はなく、病院への搬送を指示するだけ、ってことも。

笑っちゃいますし、憤慨されると思いますが、事実です。

で。

それを見抜くポイントは本当に難しいのですが、一つの指標として、さっきの医者の項目で述べたように年齢が上がれば上がるほどに体力が無くなってきます。だから、24時間対応、といっても現実不可能なことはあるんです。特に1人だとやっぱり難しい。

そのために、2人以上在宅医がいるクリニックを選ぶのがいいと思います。

 

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いくら医療は心、とはいえ、サービスである以上行う医者の体力が大事です。短距離走ではなく長距離走なのですから。

外来での対応の様子(医者も看護師も)

 あとは結局相性も重要です。というか超重要です。患者さんはもちろん、家族であるあなたと医療者の相性もとっても重要

 

とっても良い人だけど、なにか気にくわないなぁ、あわないなぁ、って人はきっといますよね?

その人が主治医になると、もやもやすることが多くなると思います。言ってることはわかるけど・・・みたいな。

 どうしても「医者に言う、相談する」ってハードルが高いんです。どんなに優しく先生が聞いてきたとしてそうですから、合わない先生だとなおさら

 

だから一度、そのクリニックが、特に外来もしているなら外来を覗いてみて下さい。同じ先生が外来をしていなくてもそのスタッフや看護師さんの雰囲気を掴めるだけでも儲けものです。ちょっと風邪っぽい、お腹いたいなどがあるときに是非。

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ただ出来ればコロナが落ち着いてからの方が良いかもしれませんね。



後書き

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いかがでしたでしょうか。

いつもの明るめな内容とはうってかわってかなり重たい内容になりましたが、みなさんの参考になれば幸いです。

 

 

最後に、本日のまとめです。
「今日話した事」
・「痛くない死に方」「痛い在宅医」を読んだ感想
・良い在宅医の条件 by masa

「見て欲しい人」
・病院>在宅と考えている人
・在宅医療に興味がある人

「結論」
・一度家族で自分の最期の瞬間への希望についてお話を
・差し迫っているのなら、「良い」在宅医を捜して下さい。
・家を選ぶなら、それなりの覚悟を決めて

 

実際「在宅医を選ぶ機会」なんて滅多にきません。
本当に一生に一度あるかどうかだと思います。

 

でもその一生に一度が、

大変だったけど良かったな・・・

良い思い出になるか、

 

こんなことしなければ良かったんだ・・・

後悔に変わるか。

できるだけ前者の方が増えて欲しいという思い、この記事を書きました。

 

在宅を選んで後悔する人が出来る限り少なくなることを祈って。
2021/3/17 masa

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