おはようございます。
関西で内科勤務医をしているmasaと言います。看護師の妻とブログで医学情報から資産形成についてまで、広く情報を発信しています。ブログを始めて丁度2年、昔に書いた記事をリメイクしていこうと思います。
今回の記事のテーマは「かぜ」。この文章を書いている2021年4月現在は新型コロナウイルスが流行して1年が経過しました。
新型コロナウイルスってただのかぜなんでしょ?
なんていっていた時代が懐かしいですね・・・。
あっというまに彼らはレベルアップして、若年男性を死に至らしめることが出来る力をもったウイルスに変化しました。はっきりいいます。「かぜ」ではありません。皆さん改めて、再度徹底的な予防をお願いします。
さて、今回のテーマは「ただのかぜ」の方ですね。
みなさん、かぜかぜいうものの、かぜ=風邪とはなにか、説明できるでしょうか?
かぜってなんだ?
この言葉、医療者だけでなくよく使われる言葉ではないでしょうか。
ちょっとかぜひいちゃったかな、って思って
皆さんも、使ったことはありませんか? ちょっとCOVID-19が流行した今では気軽に使えなくなりつつある言葉ではありますが、ではここでいう「かぜ」って一体なんなのか、皆さんは考えたことはあるでしょうか。
じつはこの「かぜ」。一言で言ってしまえば鼻からのどの奥のところまでの上気道、と呼ばれるところに微生物が入り込み、症状を引き起こす病気です。
微生物のうちほとんどはウイルスが原因になり、症状としては鼻みず・咳・咽頭痛・発熱が出てきます。ポイントは原因がなんだったとしても(ウイルスであっても、細菌であっても、どんなウイルスであったとしても)、鼻から喉奥の所に炎症を起こしている場合は「かぜ」と診断される、って所です。
原因はなんでもいいんですね。
さて、そんな「かぜ」ですが、色々症状はあるのですが、どの症状も同じくらいつらいことが多いです。
もっと具体的に医者が「かぜかな?」って思う経過を説明すると、
「なんか体だるいな/のどいがいがするな」
→「鼻水も出てきた」
→「ちょっと咳も出てきだしたぞ」
という経過が2,3日で出てきた場合は、ほとんどが「かぜ」といって良いと思います。
逆に、
・この経過とずれる場合
・咳・喉・鼻の症状がそろっていない場合
・症状がそろっていても同じくらいではなく、どれか一つがかなりきつい場合
・また、自分自身が「いつものかぜとここが違う」と思う場合
これらが当てはまってくる場合には「ただのかぜ」ではないため注意する必要がある場合があります。こちらについては下で少し書いてますので、もう少しお待ちくださいね。
一般的な「かぜ」の経過
先ほども少し紹介しましたが、基本的な「かぜ」の経過は、2,3日の経過でのどいた・はなみず・せきを始めとした複数の症状が同程度の強さででてくるのが普通の「かぜ」です。後は周り(家族・職場や学校の人)に同じ症状の人がいれば、より「らしさ」が増えてきます。
そしてそんな「かぜ」ですが、始まり方も一緒なら治り方も、のどいた・はなみず・せきの順番によくなっていきます。ただ、注意が必要なのが「せき」です。頑固な咳だけ数週間も残ってしまう方もいます。
「感冒後咳嗽」と言って、その名の通りかぜの後の後遺症で咳が残ってしまう人が中にはいます。長い人では1ヶ月以上続いてしまう人もいて、なおかつこの場合咳止めが上手く効いてくれません。むしろ咳止めを飲むよりも、蜂蜜を飲む方が咳が止まりやすい、なんてデータがあったくらいです(最近エビデンス(確からしさ)が否定されてしまいましたが)
実はmasaも咳が残る方で、風邪を一度引くと苦しめられてしまうことが多いです。
ただ、この長い長い咳についても、薬は効きにくいにしても、少しずつましになってくるのが普通です。 なので、いつまで経ってもちっとも良くならない場合は、咳喘息などの他の病気を考えなければいけませんので、お近くの病院で相談しましょう。
☆COVID-19流行下であることを踏まえて
では今話題のCOVID-19とかぜ、どのように区別したら良いのでしょうか?
少し前まで、つまり「変異株」が登場する前のCOVID-19であれば、わかりやすい特徴的な症状がありました。そう、「味覚・嗅覚障害」ですね。COVID-19の患者が周囲にいて濃厚接触者と思わしく、味覚・嗅覚障害がある、と言われたらその時点で検査する前から確率が高いな、なんて考えていました。
しかし、いま少し問題が生じていて、現在流行している「英国型の変異株」、変異前の従来型よりも「味覚・嗅覚障害」が乏しいと言われています。つまり、COVID-19と「かぜ」の違いのキーファクターである一つが無くなってしまったんです。もちろん他にも通常の風邪と比べると倦怠感が強い、や、比較的鼻汁が少なめといった特徴はありますが、ますます検査を頼る部分が増えてきてしまっています。
注意して欲しい時
ここからは最初「ただのかぜ」と思っていても、この項目が当てはまったら少し注意した方がいいかも、という内容についてお届けします。
普段の経過と違う時
自分で普段の経過と違う時は、その違うポイントを医師に伝えてください。そこが隠れている病気をみつけるヒントになるかもしれません。 また、本来であれば風邪は1週間も経てば復調に向かいます(前述の様に咳だけ残るのは別)。1週間を超えても全く復調に向かわない、という場合は他の病気の可能性があるので病院を受診してください。
・ごはんも水も取れなくなった時 ・高齢の方で、ぐったりしてきた時
基本的に「かぜ」であれば自然と良くなってくる病気なので、重症にまでなることはあまりありません(何度も言いますが、COVID-19はただの風邪とは別なので、例外です)。
ただ、小さなお子さんの場合、自分で飲物が取れなくなったりするとすぐに脱水になってしまうこともあり、その時点で点滴が必要になることがあります。
お子さんが親御さんからみて、「いつもとくらべてぐったりしていないか」という点に注目して観察してあげてください。
また、高齢の方ではせき・のどいた・はなみずなど症状が伝えられず、肺炎や尿路感染症などの病気が隠れている可能性も高くなります。 基本的に「かぜ」を引くのは若い人なんですね。これもCOVID-19は例外です。こちらも小さいお子さんと同じように家族さんからみて「普段通り」かどうかに注目し、少しでも怪しいと思ったら、病院を受診しましょう。
・一旦良くなったのに、もう一度悪くなってきた(2相性の経過と示す)時
一般的にこのような2相性の経過を示す場合、ウイルスによる感染症(いわゆる「かぜ」)は良くなってきたけど、そこに細菌による感染症が重なってきた、可能性が高いです。 具体的な病気の名前で良くあるのが副鼻腔炎、と言って、鼻炎の一種。元気であれば様子を見ることも多いですが、場合によっては抗生物質を使う必要があるので早めに病院受診を検討してください。
☆COVID-19流行下であることを踏まえて
「○○の様な経過があれば病院受診を検討しましょう」なんて言った側から真逆の事を言いますが、もし「かぜ」の人の症状がたいしたことがなければ病院受診をするのは控えましょう。と、いうのも「かぜ」の場合は治療も何もせずに良くなってしまいます。特に若い人の場合は飲水が出来ていれば自然と治ってくるので、熱冷ましなどを薬局で買って経過を見ましょう。
なにせ病院に来る方がCOVID-19をもらってしまう確率が高いです。
また今は医療崩壊が話題になっているとおり、病院側のマンパワーが足りません。「ただのかぜ」と「COVID-19」を鑑別する能力もないことが多いです。たとえCOVID-19であったとしても軽症であれば経過観察・自宅療養になることを考えると、病院を受診して闇雲にCT検査を受けないほうが放射線曝露や医療費負担が減るのは間違いありません。ただのかぜで高額な医療費負担、しゃれになりませんよね。
少しでも病院受診をせずにすむ方法を考えましょう。
そんな事を言うと、「医療者がそんな弱気なこと言うな!!」なんて声が聞こえてきそうですが、仕方がありません。これが現実です。国の主導に思うところはもちろんありますが、私達国民の行動が招いた事態です。むしろ海外ではその対応が普通です。
ちょっとかぜを引いたんで
という言葉で病院受診をしていた今までの方がおかしかったんですよ。これを気にいままでの行動を見直してみましょう。
医療者に伝えて欲しい事
実際に患者さんを診療する身として、教えてもらうと助かることは以下のような事柄です。前述のことも重ねて記載しています。
・家族や職場の人に同じ症状の人がいるか?
→ 咳・鼻・喉のなどの症状も一致すればベスト!
・いつもの風邪と違うところはないか?
・市販の薬・持っている薬も含めて既に飲んでいる薬はないか?
・咳・鼻・喉以外の症状で気になるものはないか?
さらに、COVID-19流行下であることを含めると追加では以下の様なことが気になります。
・周囲に濃厚接触者はいないか
・味覚嗅覚障害はないか
・家族以外の人との食事にはいっていないか(人数は問わない)
・大阪、東京などの都市部やデパートなど感染者と無意識かに接触する所に出向いていないか
(飲み会には言ったけど)思い当たる接触歴はありません
はもう今の時代は通りません。家族以外の人と、食事=マスクなしで会話したならば、それば立派な曝露歴になります。徹底した感染予防をお願いしますね。
かぜの時にする検査
基本的に「かぜ」であれば検査はいりません。
むしろ、
「かぜらしさがないとき」に、肺炎など他の病気を探す時に検査が必要になってきます。
「注意して欲しい時」に書いた様なものがあるときに、採血や胸の写真(X線)の検査を行います。さらに今で言えばCOVID-19の抗原orPCR検査を行うかどうかでしょうか。事前確率があまりにも増えすぎている今(2021/4/25)ではPCR検査をある程度積極的に行う必要があるかもしれませんね。
かぜの時の治療薬
基本は対症療法
・・・つまり、患者さんがつらいと思う症状に対して薬を使います。
熱があれば解熱薬、
のどいたが強ければ痛みどめ、
咳がつらければ咳止め、
といった形です。
また、漢方薬にも風邪に良く効くものがあります。
基本的に抗生物質とは「細菌」への治療薬であるので、「ウイルス」が原因である「かぜ」には効果がありません。ご注意を。 ただ下痢の副作用に苦しめられてしまうこともありますから。
そして、再三付け足してきたCOVID-19の場合についてですが。こちらも有効な治療法はありません。酸素投与が必要になってくる重症な患者に使うと多少効果があるかも、という薬が2,3見つかったくらいです。みなさん、もう一度いいますね。
COVID-19に有効な治療はありません。貴方と大切な家族を守るたった一つの方法は、かからないことだけです。
誰もがCOVID-19で死んでしまう日本社会になっています。仕事で外に出ることがあるのは当然ですが、とにかく、自分の両手にいつ何時もCOVID-19が潜んでいる可能性を考えて行動してくださいね。
あとがき
少し長くなってしまいましたが、今日はここまで。
読んで頂いてありがとうございました。
質問があればコメントでお気軽にどうぞ。
2019/04/23 masa(2021/4/26 改訂)
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