ウェステルマン肺吸虫症【2019/5/11 更新】

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医者看護師夫婦が教える感染症
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おはようございます。

医療ドラマの
 「ラジエーションハウス〜放射線科医の診断レポート〜」
 が4月の月曜9時から放送が始まりましたね。

主演は窪田正孝さん、
 レントゲンやCT、MRIといった画像検査結果を読影する放射線科医、のアシストをしてくれる、
 主に検査を行ってくれる放射線技師が主人公です。

原作は「グランドジャンプ」(集英社)で連載中で、
原作:横幕智裕さん、漫画:モリタイシさんです。

僕はなにを隠そう、
ドラマ化決定する前から、というより連載開始から原作をよんでいます

普段業務で検査を行う際に僕らがお世話になることが多い
「放射線技師」
ですが、

 患者さんを始めとする一般の方は
 あまり詳しくご存じない方も多いかもしれません。


 この作品はそこに視点を置いた漫画で、
 医学情報も詳しく記載されていて、

 違和感なく読む事ができた医学漫画の一つです。

 

あとは、単純にモリタイシさんの絵が好き、
っていうのもあります。

いでじゅう、レンジマンも好きでした(^^)

モリタイシさんの漫画について語ることもやぶさかではありませんが、
今日は第一話で登場した「ウェステルマン肺吸虫症」について、解説します。

需要があるかどうかはしりません(笑)
ぶっちゃけない気がしてますが、
自分の勉強にもなるのでまとめてみます。

一般の方に出来るだけ、わかりやすく。

あ、多少のネタバレになるとも思われるので、
ドラマをチェックした後がおすすめ
です!

 

○そもそも

 肺吸虫は、淡水産のカニを感染源とした、
 食べ物で感染する寄生虫です。

 分布地としてはアジアが中心で、日本もその一つ。
 日本では二種類、
 ウェステルマン肺吸虫(ドラマで出た奴!)と宮崎肺吸虫の二種類が問題になりますが、
 ほとんどはウェステルマン肺吸虫が多くを占めます。

 一年で50〜60例ぐらい発症するようです。

○原因

 原因は、食べ物から感染する病気でイメージをしてもらうと想像しやすいでしょうか。

 そう、生のサワガニ・ザリガニ・イノシシの摂取です。   シカ肉からの感染の報告もあるみたいですね。

 九州のイノシシ猟師さんや、
 関東地方の東南アジア出身の女性のサワガニ料理摂取
 が報告例としては多い様子です。

○症状

 食べた直後は胃腸炎と一緒で
 軽い吐き気や下痢、胃の痛み
 などが起こることが多いですが、すぐに診断されることはほとんどありません。

 感染から1ヶ月ほど経過すると、
 虫が移動を始め、主に肺などの臓器へ移動していきます。

 肺がメインだから肺吸虫という名前なんですね。
 肺に住み着くと、そこで炎症を起こし、
 肺炎を起こしたり、肺の周りに水が貯まったりしてきます。
 
 この頃ぐらいから、
 微熱や咳・息苦しさなどを起こすことがあります。

 ただ、それだけではなかなか診断には直結しづらいと思います。


 ただ、ドラマの様に脳に移動する例もあります。
 これまた比較的稀で、1%にも満たないと言われています。
 その分診断が難しく、ドラマみたいに
 食事接種歴をきちんと確認
 できないと判断が難しい
です。

 特に1-2ヶ月前、と言われると余計難しいですよね
 (普通覚えてません・・・)。

 脳に虫が移動するため、
 他の脳の病気である髄膜炎・脳炎・出血などが鑑別疾患
 として上がってきます。

 ドラマでも手術出来る病院に転院するかどうかで
 盛り上がってましたね!

○検査

 診断のための検査では採血で寄生虫などの感染があると
 上昇する好酸球の数値を見たり、
 肺や脳の画像検査(Xp,CT,MRIなど)を行います。

 ここで技師さんの出番!ってことですね。

 他にも肺吸虫に対する抗体検査、などもありますが、
 稀な疾患であることからなかなか気軽にオーダー出来る検査ではありません(高いし時間かかるし・・・)。

 病歴から目星をつけて検査をするのが大事!です。

○治療

 治療としては手術・・・ではもちろんなく、
 飲み薬で治療できます。


 プラジカンテル、という薬ですが、正確には作用機序は分かっていません・・・。

 虫の細胞膜のカルシウムイオン透過性をおかしくして、
 麻痺させ、麻痺した虫に対して何らかの除去作用が働く、

 というふわっとしたことしか分かっていませんが、
 治療すれば速やかに良くなります。

○予防

 とっても大事な予防方法ですが、
 すでにおわかりでしょう。。。

 そう、火を通してやればいいんです!!

 生のサワガニ(淡水産)・ザリガニを食べるのさえ避ければ充分です。
 また、当然ですが汚染された水にも注意、ですね。

 

 さて、長々とした説明、いかがだったでしょうか?

 ここまで読んで頂いた方はおわかりでしょう。
 なかなか診断に至るまでは難しい病気です。


 鑑別診断に上がるものも脳出血や腫瘍など、
 介入が難しいものだったりもするし判断が大変です。

 曝露してから症状が始まるのも1ヶ月かかってしまいますし、
 なかなか「1ヶ月前にサワガニ食べたりしましたか?」
 なんて聞くことなんてほとんどあり得ません。

 さらにドラマでは、
 脳に金属があってMRIが取れなかったり、
 造影剤アレルギーがあったりと、
 余計診断に難渋する結果となっていたと。。。

 さすが、主人公ですね!(笑)
 そうなれるように頑張らないと。


患者さんへのTake home messageとしては、

・生のサワガニ,イノシシを食べる時は、覚悟を決めて。 
・食べた後おかしな症状があれば、
医療者に食べたことをきちんと伝える

以上になります。
質問があればコメントまでお気軽にお願いします。
疾患解説のリクエストも募集してます。


ではでは。
2019/04/24 masa

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