【内科勤務医の勉強記録】食事中に気づいた顎の疲れに失明の恐れ!?巨細胞性動脈炎【GCA】

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勤務医夫の勉強記録
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*注意事項:本記事を読む前に目を通して下さい*
このページはあくまでmasaの勉強用の記録です。実臨床に用いる場合は自己責任でお願いします。記事作成中の情報ですのでご自身で最新の情報を確認した上でお願いします。
前回の記事の【感染性心内膜炎】と鑑別に苦労している患者がいたことがあり、まとめました。
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巨細胞性動脈炎の概論

【血管炎】という、体の血管で炎症が起きる病気の中でも、比較的大きい血管で炎症がおきる病気です。元々側頭動脈炎という名前だったが、側頭動脈以外の首から上の血管でも生じるため、巨細胞性動脈炎という名前に変化した。
【頭痛・顎跛行(食事で顎が疲れる)・側頭動脈所見】のいずれもなければ否定的!

巨細胞性動脈炎の症状

【初診時に症状がなくても、不明熱では積極的に検索が必要!】
 → 2/3に頭痛を認め、典型的なのは片側で側頭部だが典型的でないことも多い。
   臥位で増悪する頭痛で逆起立性頭痛とも言われる。

 

【頭皮の違和感は確認!女性なら櫛を使う時の痛みをチェック!】
 → 患者の約半数で認める。また、複視や顎跛行は特異度が高い上に、失明のリスクが高いので注意が必要(Lancet 2008;372:234-45)
 → 失明は20%に認め、病初期に多いとされる(一過性黒内障が起きると半数が失明

 

【約半数が熱・倦怠感・体重減少を起こすが多くは微熱!】
 → 39-40度までの高熱は15%以下
 呼吸器症状で発症することも9%に認め、主訴が乾性咳嗽であることも4%にある。
 → 咳受容体の虚血により生じているらしい。

巨細胞性動脈炎の身体診察

【耳珠の前方の拍動をチェック!片側しか触れなければ確定診断!】
 → 側頭動脈の圧痛・蛇行/拡張・拍動の低下が典型的

 

【動脈雑音と四肢BP左右差チェック!】
 → 血管狭窄は鎖骨下動脈〜椎骨動脈分岐部が一番きつい

巨細胞性動脈炎の検査

側頭動脈生検

炎症部位が連続していないとびとびの病変のため、少なくとも1.5-2.0cmほど採取を依頼するのが重要。感度は86.9%で、平均不一致率(対側が陰性である確立)は5.5%程度なので、どっちの血管でも基本OK。

   他の血管炎と違い、血管の内膜が炎症の主座で肉芽腫形成は稀
(ANCA関連血管炎やPAN,アミロイドーシスでも側頭動脈病変は認めるため病理はかなり大事!

 

 陽性率:ステロイド2週以内で78%、2-4週で65%、4週以上では40%(SeminArthritis Rheum 2007;37:13-9.)
→ 先にステロイドを初めてもOK

超音波検査/造影CT・MRI/PET-CT

 生検がマストとされているが、近年は超音波検査によるハローサインや造影CT/MRIによる側頭動脈の血流の途絶、PET-CTでの血管への集簇を参考に診断した上で治療を開始しても良い、という流れになっている。

巨細胞性動脈炎の診断

〜診断基準〜
→ ただ基準は結構当てはまってしまうため、他の疾患の除外をきちんとすることがかなり大事
☆ANCA関連血管炎との鑑別に注意が必要!

巨細胞性動脈炎の治療

ステロイド治療

 疑った時点でプレドニゾロン1mg/kg/dayを開始し、その後に側頭動脈生検を検討!

 

 眼・中枢神経・脳神経症状がなければ0.5-1.0mg/kg/dayで、ある場合はmPSLパルスorPSL 1mg/kg/day2-4週投与し、2週間に10%の速度で減量を行う(Ann Intern Med1975,82:613,56)

 

 視力の予後はステロイドパルスでの治療開始と通常ステロイドでの治療開始では有意差はないとされているが、パルス療法で開始した方がGCA寛解率および累積ステロイド使用量においてより優れたという報告はある(PMID17009270)

 

 膠原病診療ノート第4版ではPSL 30mg/dayで寛解(エキスパートオピニオンだが)

 

 減量時に再燃を認める、もしくは症状の改善が困難な場合は免疫抑制薬の併用を考慮する(目標は治療開始3ヶ月時点でPSL 10-15mg/dayまでの減量

免疫抑制剤

 MTX:MTXを10-15mg/週をステロイドに併用すればGCAの1回目の再燃が35%、2回目の再燃が51%減少し、ステロイド累積使用量も減少するとされている(PMID17665429)
 トシリズマブ:162mg/週の皮下注射を併用する事で、ステロイド併用時に投与量の減量を導くことが出来る。

その他

 少量アスピリンがGCAの虚血合併症に対し予防効果があるという後ろ向きの研究データあり。100mg/day程度の併用をEULARは推奨。

巨細胞性動脈炎の予後

 適切な減量速度でも2年以内の再燃があると言われる。多くは1-2年で収束するとされるため、いずれステロイドは中止できるといわれていた(Ann Intern Med 1978,88:162)

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