怖い病気、「アニサキスアレルギー」【2019/05/11更新】

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医者看護師夫婦が教えるアレルギー疾患
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おはようございます。


今日も何とか連日更新、1週間は持ちましたね!

いったん途絶えるとどうなるかが本当に恐ろしいので、
何とかつづけて参ります!



ただ、昨日、一昨日と比べると、
より一層マニアックな話
をしていきます。

でも、とっても大事なお話です。


アニサキス症の中の分類4番目。

「アニサキスアレルギー」について、です。

と、いうのもこの疾患、まだまだ研究途中の疾患概念で、
検査の方法や、根本的な治療法などが確立されていないんです。

最近言われ出した病気、ってところですね。

 

「じゃあ、マイナーな病気なんだ」

 

「対して重要じゃないんじゃない?」

 

 

そう思われるかもしれませんが、結構、というか、
かなり厄介な病気です


前々回に話をしたとおもいますが、
「アニサキス症」4つの分類の中で、最もやっかいだと、個人的には思っています。



では、どんな病気なのか。

少し難しいですが、大事なことなのでお話していきます。



一般の人にもわかりやすく。
がんばります。




 

「アニサキスアレルギー」 ○概論

まずは「アレルギー」について簡単に。


アレルギーとは、簡単に言うと、
体外から体に対して何らかの刺激・物質が入った時に、それに対して体の中の防御反応が過剰に反応してしまうこと
を言います。


一番身近な例で言えば・・・、そうですね。



肌が荒れやすい方で言えば、
湿布などを体に貼り続けていたとき、
剥がした後が赤くなっていたりする方はいないでしょうか?
あれも些細なものですが、反応と言えるかもしれません。



アレルギーは、
それが「過剰に出る」ということが問題になってきます。




では、アレルギーが起こるとどんな症状が起きるのか?
イメージ出来る方は居るでしょうか?


イメージがわいた方、きっとその通りです。


イメージがわかない方、
医療ドラマでこんな場面をご覧になったことはありませんか?



よく、こんな言葉が出てこないでしょうか?



「アナフィラキシーショックだ!!」



あれです、あれ。




アナフィラキシーショック。


よく蜂だったり、薬だったり、
あとは食物アレルギーなんかの回のドラマで話題になりますね。

それが一番重症のアレルギー反応です。


で、今回お話する「アニサキスアレルギー」。



これは「アニサキス」に対するアレルギー
という事になります。



・・・イメージできますか?


ちょっと難しいかもしれませんね。
少しずつ解説していきます。



ちょっと詳し過ぎるかもしれませんが、ご了承を。

○症状

起きる症状はどんなものがあるでしょうか。

わかりやすくアナフィラキシーを例に出してお話します。



症状の出る臓器は、細かく上げればたくさんありますが、大きくは4つになります。

1.皮膚 
2.上気道(空気の通り路)
3.消化管
4.血管


1つめの皮膚に関してはイメージがしやすいと思います。
赤いふくれあがって見える皮疹(蚊に刺された後みたいな)が全身に出てきて、強い痒みが出てきます。

ひっかくと余計刺激されてかゆくなる、あれです。



2つめ
は空気の通り道である、気道
中でも口から喉奥のところまでの上気道が一番症状が起きてきます。
2番目に話をしていますが、これが一番怖い症状です。

よくテレビでも「息が苦しい・・・」というシーンがあると思いますが、上気道の閉塞は、一分一秒を争います

原因となる物質を食べた後、この症状がでてくる場合、
特に息苦しさが強い場合は直ぐに救急車を呼んでください




3つめは消化管
つまりお腹の中ですね。
腸の動きがとても良くなるので、腹痛、そして下痢が出現してくるとされています。
これについても個人差はありますが激痛になることもあるので注意が必要です。




4つめは血管
血管の症状、と聞くと想像しづらいかもしれませんが、先ほどお話ししたテレビの例。


「アナフィラキシーショックだ!」


の、「ショック」の部分
簡単に言ってしまえば血圧が落ちてしまっている


体中の臓器・細胞に充分な血液を遅れていない!

という状態です。


人は、血管が締まったり、開いたりすることで無意識に血圧をコントロールしているのですが、その血管が、勝手に開きっぱなしになってしまいます。


結果として、心臓の中に血液が充分に戻ってくることが出来ず、血圧が下がってしまう、という訳です。


また「ショック」については詳しく説明させてもらいますね。

 

 

○原因は?

ではこのアレルギーの原因はなんでしょうか?



一瞬何を言ってるかわからなかった方も居るかもしれません。



当然、「アニサキス」ですよね。

だって、今回の話は「アニサキスアレルギー」ですからね。



ただ、前々回に、僕がこんな事を言ったのを覚えているでしょうか?



「アニサキスアレルギーだけは、生の魚介類を避けても、ましてや加熱調理を行っても防ぐことが出来ない」



思い出しましたか?
では、どういうことなんでしょうか。

 

まぁ、言ってしまえば簡単な話なんです。


繰り返しますが、「アニサキスアレルギー」とは「アニサキス」に対するアレルギー反応なんです。


焼いたところで、その魚の中に入り混んだ「アニサキス」本態の存在を消滅させることなんてできません

詳しく言えば、
「アニサキスアレルギー」の患者さんはそれぞれ、アレルギー反応を示す原因が違っています。

アニサキス本体に反応する方。
アニサキスから出される分泌物に対して反応する方。


また、その原因も、実は加熱することによって防ぐことが出来る、と 言われているものもあります(ただ数は少ないです)


ただ、大多数が、加熱しても体内に入ってしまえばその患者さんのアレルギーを引き起こしてしまう、原因物質であることが多いです。



つまり、

「アニサキス」を含むかもしれない魚介類を、生どころか、「加熱して食べたとしても、アレルギーが起こる可能性がある」

という訳です。




ふぅ・・・やっと言えてすっきりしました。

3日かけてようやくたどり着いたセリフですからね。
(詳しくは前回、前々回をチェック!)

 

 

 

○検査

検査については、色々ありますが、簡単にできるのは採血検査です。

良く診断できるパターンは、

サバを食べてアレルギーの症状がでてきた」

「ただ、採血するとサバにアレルギーはない結果だった」




そんな時に、アニサキスを確認すると、アレルギー反応あり、という結果。



そういったときに、「アニサキスアレルギー」ではないかなぁ・・・となります。


こんなふわっとした言い方になっているのは、実際に試してみた訳ではなく、想像の域を出ないため、です。




皮膚科などでは良く、食べ物アレルギーなどでは、
プリックテスト、と言って、皮膚に原因物質の何十倍にもうすめた原因を患者さんの皮膚に注射することによって、赤く反応をしめすか、アレルギー反応が出てくるかを検査
することがあります。


ただ、この「アニサキスアレルギー」はここでも厄介で、
「アニサキス」の検査用の抗原(原因物質のこと)が確保されている施設はあまりありません。

それこそ、お近くの病院にはまずないと思われます。
大きな大学病院とか研究施設でないと取り扱ってないことが多いです。

現実的には、血液検査までで
「強くアニサキスアレルギーを疑う」
でとどまることが多いと思われます。

 

 

○予防・治療

では、どうやったら「アニサキスアレルギー」を防げるのでしょう。



・・・



残念なことに、現実的に、
「魚介類摂取を避ける」しか方法がありません。



良く言われているのが、
アニサキスを含むことが多いとされる、サバやイカ(覚えてますか?)などを避けることが一般的です。


ただ、これも難しい話なのですが、
アニサキスは、本当に稀にですが貝の中に紛れ込んでいたりすることもあります。


アニサキスを含むオキアミ(これも覚えていますか?)が、
少しでも接触する可能性がある魚介類については、「絶対に大丈夫」とは言えません





そして、概念としてもまだはっきりしていない分野なので、
おそるおそる食事制限を解除していく
という方法しか現実的にはありません。


「根本的な解決になってないじゃないか!!」




えぇ、その通りです。



ここが、「アニサキスアレルギー」という病気の厄介なところなんです。


実際に原因不明のアレルギー、とされてる患者さんの中に、
実は「アニサキスアレルギー」である患者さんは多いと言われています。



実際、
腹部症状でもなければ胃カメラなんてまずしませんし、
医療者もなかなかアニサキスを調べてみよう、とはなりません
からね。



だから、
魚介類の摂取を避ける、
もしくはオキアミをたべない・接触しない魚介類を食べる、

が患者さんの治療方針となります。



実際に、「アニサキスアレルギー」を発症する方の多くは、
日本という国柄もあり、魚介類がお好きな方が多いです。


そして、原因がはっきりしていない、ということもあり、明確な治療方針を示すこともできず、恐怖を抱えながら長くこの病気と戦っていく必要があります



いち早く、
この「アニサキスアレルギー」の原因の詳細が究明されるとともに、
患者さんが安心して生活できるような指針が打ち出されることを望みます。


 






「アニサキス」についてのお話は、今日が最後になります。
どうでしたか?



まさかの3部構成という重めな話でしたが、
勉強になったでしょうか。



特に、今日お話させてもらった、
「アニサキスアレルギー」について、少しでも多くの方が情報を持ち、少しでも多くの患者さんの助けになることを祈っています。





今日のTakeHome messageは

・アナフィラキシー、特に呼吸困難が出たら直ぐに救急車を 
・「アニサキスアレルギー」は料理しても防げない

です。



何か質問があれば、コメントの方まで。
お答えできることはお答えいたします。


明日何を話すかはまだ決めていません。


医療の話が、少しでもわかりやすく出来るよう、これからも頑張ります。

2019/4/29  masa

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