おはようございます。
週末ですね!
医者にとってはあんまり関係ありませんが、まぁ週末です。
GW明けで疲れた体を癒やしてあげてくださいませ。
僕の分まで。。。
さ、さて。
今日は昨日に引き続き、
「め」の話、
をしていく予定だったのですが。
そういえば咬まれたシリーズでひとつメジャーなものをやってなかったことを思い出したので、
もう一度咬まれたシリーズに戻ります。
それがこちら!
「ヘビ咬傷」
ですね。
咬まれたと言えば一番に思いつくのがこちらではないでしょうか。
もちろん滅多にそんな状況になることはありませんが、
山が近い所の病院に勤めていれば時折救急に咬まれたという方はやってきます。
そんな時にどうするのか、
そして、病院に行くまでに何が出来ればベストなのか。
その辺りについて話していきます。
ヘビの種類は3種類、
マムシ・ヤマカガシ・ハブについて。
違法に輸入された毒ヘビ、ってパターンもなくはないですが、
ここはあくまで一般の方に。
多分そういうのを飼っている方なら僕より対応詳しいと思うし。
ではここから話をしていきますね。
○概論
さてまずヘビに咬まれるって、
どれくらい危険なことなんでしょうか。
もちろん毒を持っていないヘビではなく、
マムシ・ヤマカガシ・ハブのような毒蛇に咬まれた場合です。
痛い・・・
いや、まぁ、確かにその通りです。
では例えば、
「入院」は必要になるでしょうか?
どう思います?
いや、そこまではいらないのでは・・・
いやいや、毒蛇だよ? 入院でしょ。
色んな意見があると思います。
答えですが、
「毒蛇に咬まれた場合は原則全例入院です」
重症度に応じてこの後お話しする治療方法は様々ではありますが、
原則は入院した上で経過観察が必要になります。
と、いうのも後でお話ししますが、
マムシでは受傷から腫れのピークまで平均で2日ほどかかります。
つまり、重症度の全貌が分かるまで2日もかかる、という事です。
受診した直後に軽症だから、何もしない、
ってことには絶対になりません。
軽症であっても入院してもらった上で、
2日は経過観察を行い、その中で重症度を見極めていくことが大切になります。
では次にヘビに咬まれた時にして欲しいこと、しても意味が無いことをお伝えします。
実際に咬まれた時冷静にその行動が速やかに取れるか、
は難しいと思いますが、知っておくことに意味があると思います。
○咬まれたらやって欲しいこと
まずは落ち着いてください。
すぐ死んでしまう!!と思われる方も居るかもしれませんが、
マムシ咬傷でなくなる方は0.2%と極めて低いです。
ただもちろん適切な治療を受ける必要はあるので最寄りの医療機関に向かいましょう。
その病院に救急がない場合は先に電話をして向こうの病院の指示を仰ぐことも大切ですね。
近くに別の急性期病院があるかもしれません。
くれぐれもこの後お話しする余計なことはなにもせずに。
また、もう一つ大切なのは、
咬まれた方の指・腕が腫れてこないうちに時計・指輪を外すことです。
実際ヘビ咬傷での腫れはものすごいです。
あっという間に指輪や時計がはずせなくなります。
場合によっては虚血が起きてしまうため、指輪や時計を切断しなくてはならなくなります。
指や腕の虚血を防ぐ意味はもちろん、大事な指輪・時計の為にも外しておきましょう。
○咬まれた時やってはダメなこと、意味がないこと(余計なこと)
・咬まれた所を縛る
・咬まれた所から口や吸引器で毒を吸い出す
・冷やす
・腫れたところを切開する
これらには意味がありません。
よく漫画とかで出てきそうなイメージですけどね。
特に切ったり、縛ったりしても余計傷口を拡げるだけだったり、
周囲の組織をダメにしてしまうことがあります。
○各論
さて。
不可能は承知の上で、それでももう一つ。
咬まれた直後にやって欲しいことがあります。
それが、
「どんなヘビに咬まれたか、医療者に説明できるようにする」
です。
色やサイズ、特徴を覚えておくことや、
もちろんよくヘビを見ている人なら問題無いですが、
そうでなければ携帯で写真を撮って、病院の医療者に見せてください。
ん?
そんな余裕ないって?
いや、その通りだと思います。
なので、不可能は承知の上で、お願いしています。
と、言うのも、ヘビは咬まれた相手によって微妙に症状が変わっています。
そして何より抗毒素血清という、治療薬が個別に存在しています。
間違って違うヘビの血清を入れても効果がないどころか副作用が起きて大変です。
もちろん咬まれた地域などからも推測はできますが、
より確実に正しい血清を投与するためにも、
咬まれた直後こそ冷静になって、その相手の特徴を確認してください。
ではここからは少し専門的となってしまいますが、
個別のヘビ咬傷の特徴を少しだけ話しますね。
【マムシ】
マムシ咬傷は、日本で年間3000例発症しています。
多いですね。
一日に日本のどこかで10人の人がマムシに咬まれているイメージです。
こうするとめっちゃ多いですね。
無関係じゃないような気がしてきます。
特徴としては、めちゃくちゃ腫れてきます。
そして、この腫れの範囲が重症度と関わってきます。
なので、医療者は患者さんの腫れの範囲をマジックでマーキングすると思います。
決しておもしろおかしくしてる訳ではなく、真剣に、です。
そこは間違わないでくださいね?
そして、その重症度に応じて、
先ほど話した抗毒素血清の投与を検討します。
また、毒素が入らなくてもヘビに咬まれたのは事実なので、
ネコや犬と同様に咬傷による細菌感染予防のために抗生剤の投与を行います。
これはマムシに限ったことではありませんね。
もし内容を忘れた方がいれば、復習してきてください!
【ハブ】
さて、ハブですが。
年間100例ほど、日本で発症します。
これもイメージ多いですね。
3日に1回、一人が受傷しています。
ただ、ハブはマムシと違って、最近死亡例は報告がありません。
ハブ抗毒素血清が効果覿面で、死亡例を激減させています。
なのでやっぱり「ハブかどうか」が分かっていることが大事になりますね。
【ヤマカガシ】
ヤマカガシの報告はハブ・マムシの二つに比べるととても稀です。
また、その二つと比べて咬まれた場所はあまり腫れないとされています。
ただ、毒素がやっかい。
体に入り混むと出血傾向、つまり血が止まりにくくなってしまいます。
そのため傷口から出血があることが多いです(約80%)
こちらもヤマカガシ抗毒素血清の投与が重要です。
なんと、投与例で死亡例はありません!
また、毒素による腎機能障害など、合併症も優位に減らしていると言われています。
○抗毒素血清の副作用
さぁ、散々「抗毒素血清が有効!」と伝えてきました。
が、やはり副作用もあります。
ではどんな副作用か。
基本的には散々お話ししてきたようなアレルギー反応がメインになります。
そのため、投与する前に予防的にアドレナリンという薬の皮下注をした上で投与を行います。
ただ、ヘビ咬傷を疑った場合は、
「アレルギーが出るかどうか」なんてゆっくり調べてる暇はないので、
疑い、適応があると判断すれば即投与。
そしてその上で合併症が出ることがあれば適宜対応する、という形が一般的です。
なので、とにかく、不可能は承知と思いつつ、
なにより僕自身が咬まれた時に出来るかどうかは置いておいて、
「どんなヘビに咬まれたのか、写メを取ってください」
いかがでしたでしょうか。
もう一度咬傷に戻りましたが、
これで一通り咬傷シリーズは終わりでいいか、と思います。
本日のTake Home messageはこちら
★★Take home message★★ ・咬まれても焦らず行動し、指輪/時計は外しておく。 ・咬まれたヘビの特徴を確認。可能なら写メる。 ・速やかに医療機関を受診する。
ではまた明日。
明日は、医学情報から離れる日、日曜日。
「変わってる? 医学生の私生活(恋愛事情もあるよ)」
をお送りします。
をお送りします。
ではでは
2019/05/11 masa
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