対応が難しい。PTSDの話 後編

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医者看護師夫婦が教える精神疾患
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こんばんわ。
今週も今日でついに終わりですね。
いわゆる花金です。
以前もこんな話しましたっけね。
ただmasaは明日働く日なので、関係ありませんが。
masa

・・・ふぅ。

さて、今日は
PTSD:post-traumatic stress disorder
の後半戦をお話ししていこうと思います。
昨日お話ししたように
PTSDはとても難しい病気です。
個人で抱え込まず、
医療者・家族が協力して付き合っていくべき病気
だと思います。
このブログが少しだけでも皆さんの助けになることを祈って。
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PTSDの仲間

 PTSDですが、
 昨日話した様にPTSDにもいろんなタイプがあります。
トラウマ体験にであった直後から症状が出現するもの。
 直後は比較的平気そうにみえるものの、
2ヶ月後から症状が出現するもの。
 様々ですが、
 そんなPTSDと医学的には分けられているものの、
 似ているこころの病気があります。
 少しお話ししていきます。

ASD

 ASD:Acute stress disorderといいます。
 Acute、
 つまり、
 トラウマ体験があった直後から「PTSD」の様な症状
 があれば、診断されます。
 具体的に言えば1ヶ月以内に、
 次の症状のうち9つ以上を認めた場合に診断されます。
 まぁ、ほとんど当てはまる、と思ってもらえばいいです。
・出来事の侵襲的な想起
・出来事に関した悪夢
・出来事が再びおきているように感じる解離症状
・出来事に関連するきっかけで生じる、
強烈なまたは遷延する不快気分や生理的反応
・幸福や満足や愛情などの陽性感情が体験できない
・周囲や自分自身の現実が変容した感覚
・出来事に関する内容の想起不能(思い出せない)
・関連事項の回避
・出来事に関連する記憶や思考、感情
(あるいはそれらを呼び起こす物事)の回避
・睡眠障害、苛正しさや易怒性、
警戒心、集中困難、驚愕反応
 でも、このASDとPTSD。
 厳密に分ける必要があるのでしょうか?
 実はこのASDですが。
 基本的には自然と症状が落ち着く事が多い、
と言われています。
 なので、
 この後お話しするようなPTSDの治療の薬の開始は
 推奨されません。
 とはいえ、自然に良くならない方
 つまり
 PTSDに移行してしまう患者さんもいます。
 だって、
 症状がほぼ一緒で、期間の違いだけですからね。

Dr.F

多少長引く人はいてもいいと思いませんか?

 ただ、その場合でも
 通常のPTSDで発症する方々よりも
自然に症状がなくなる方が多い、と言われています。
 つまり。
 受傷直後に反応が起こるASDパターンの場合は、
自然によくなることが期待される
 ということですね。

PTSR

 次にもう一つ。
 PTSRと呼ばれるものがあります。
 今日は英単語が多い日ですね、ごめんなさい。
 PTSR:Post-traumatic stress reaction
とよばれます。

 PTSDがDisorder:障害なのに対し、
PTSRはReaction:反応です。
 つまり。
似たような症状がでるものの、
 障害=日常生活を制限される程のものではない
 ということ。
ショックな出来事を経験した時のこころの反応
 です。
 この言葉を聞いて、皆さんどう思われました?
masa

そらそうだろ

 と思われた人も多いのではないでしょうか?
 そうなんです。
 これって、医学の言葉にしてるだけで普通のことなんです。
 だって、
目の前で人が死ぬくらいの強いイベント
が起きてるんですよ?

こころに被害がないわけないじゃないですか!

 PTSRではPTSDと同じように、次の様な症状を起こします。
・過覚醒
・麻痺
・回避
・再体験
 ただ、このトラウマによる症状ですが。
 よくよく考えれば生きていくのには当然の反応です。
 いつだったか、
 「不安」の話をした時と同じことですね。
 それぞれ、人間が本来生きていく上で当然の反応です。
 それぞれ、言い換えればこうなります。
過覚醒
→ 緊急な状態を乗り切るためのもの
麻痺
→ 恐怖やさまざまな感情に圧倒されると行動できない
→ 反射的にこころへの影響を絞っている
回避
→ 同じ危険を避けるために行動
再体験
→ その場面を教訓として未来の危険を避けるため
Dr.F
 ね?
 これって、別に変なことじゃありません。
とてつもなくつらいトラウマ体験を
今後の未来の生活に生かすため。
 それに必要な反応なんです。
 ただ、
 それが過剰に反応し、
 日常生活に支障を来すほどこころが参ってしまう
 それを
 PTSD=障害
 と名前をつけるんです。
 実際
 PTSR=反応
 ですむと症状自体は自然と消失することが多いですから。

ちょっと一休み。

 さて、治療の話をする前に。
 すこしだけ脱線します。
 でも、大事な小話を2つしていきますね。

★フラッシュバックと通常の記憶の違い

 昨日話をしましたが。
 PTSDの診断に重要な症状。
 そのうちの
 フラッシュバック
 これについてもう少し話をしていきます。
 昨日すこし話をしましたが。
 「フラッシュバック」は単なる記憶とは違います。
 何が違うかというと、次の2点が違います。
①思い出したくないのに、勝手に思い出してしまう
(不随意的侵入的想起)
②想起するたびに何らかの感情の動きが生じること
(例外なくおちこんだり、心がざわついたりすること)
 みなさんも試しになんでもいいので
 昔のことを思い出してみて下さい。
 できれば恥ずかしいことや失敗したこと
 あんまり良い記憶じゃない方がいいかもしれません。
masa

思い出しました?

 もちろん
 あんまりいい気持ちにはならないかもしれないですが、
 その記憶が
「思い出してください」って言われることなく
ただ単に日常生活を過ごしている時に
思い出したりすることってありますか?
 また、
 何度思い出してもイライラしてきたり
落ち込んできたりと繰り返し繰り返し心がざわつくようなことはありますか?
 それが、
 単なる嫌な記憶と、フラッシュバックの違い
だと言われています。
 また、
 単なる記憶であれば年数を重ねるごとに徐々に感じた感覚や思いなどは薄れていきますが、PTSDではそれがないと言われています。
 治療の項目でお話ししますが、
 受け入れるまで鮮明なまま焼き付いています

★イベントの詳細を確認してはダメ

 PTSDの治療のためにも、
 医療者は患者さんにある程度
トラウマ体験について質問することが重要になります。
 例えば、
Dr.F
Dr.F

何かをきっかけで突然思い出すようなつらい体験はありますか?

 などといった質問をぶつけ、
それをきっかけに悪いことがないか。
避けていることがないか、
 などと確認していきます。
 特に次のような変化が出ていれば、
 より「PTSD」らしいと言えます。
①いつも緊張して不安が強くなった、
②何も楽しめなくなったり
気分が落ち込みやすくなった、
③夜間に悪夢で飛び起きたりするようになった
 意外と聞かれてみて初めて

きっかけイベント=「トラウマ体験」
が発覚することもあります。
 ただ。
 ここが一番大切なことですが。
masa
masa

初期段階ではトラウマ体験に関する詳細を
聞いてはいけません

 もう一度言います。
トラウマ体験の詳細を
聞いてはいけません  
 と、いうのも。
 診断をつけること自体は、詳細を聞く必要がなく可能です。
 先ほどの質問にもYes or Noで答えてもらえばいいだけです。
 詳細を聞くことに関しては、
 「治療の段階」からでいい。
 ここは慎重に当たらないと、最後でお話しする
 最悪の結果を導くことになってしまいます
 昨日もお話ししましたが。
 最近多い痛ましい事件・事故。
 残された家族・関係者へのインタビューの際は、
 マスコミ関係者の方は決して加害者にならぬように。
 どうかお願いいたします。

すいません。
今日でPTSDの話を終わらせようと思ったのですが。
日常業務でばたついたので、次回へこれ以降は延期します。
まさかの3部構成になり、ごめんなさい。
たぶん次回はそこまで長くならないとおもいますが。
今日のTake Home messageはこちら。
★★Take home message★★
・PTSRは生き物にとって必要なこと!
・フラッシュバックとただの記憶はちがう!
・トラウマ体験の詳細は、基本的に必要ない!
以上になります。
では皆さん、良い週末をお過ごし下さい。
PTSDの治療編は週明けの月曜日に。
明日は病院見学後半戦について。
明後日は株日記について。
出来れば更新していこうと思います。
どちらも需要があるかは不透明ですが。
では、また明日。
2019/05/31 masa

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